| スポッターズ的ひこうき写真館                                             事件と事故
 カンタス航空のA380がエンジントラブルで緊急着陸 
 
 カンタス航空のA380がインドネシア領バタム島上空でエンジントラブルに見舞われた。同型機(事故機の登録番号はVH-OQA)
 当該機は2010年11月14日午前11時45分にチャンギ空港に緊急着陸した。
 
 地上に部品を飛散・落下させたほか、翼から煙を曳いているのが目撃されている。
 
 破損したのは第2エンジンで。その損傷は深刻なものであった。
 
 エンジンナセルが喪失し、吹き飛んだ中圧タービンディスクがバタム島で発見された。
 
 また、トラブル発生時の衝撃で破片が主翼を貫通してダメージを与えていた。
 
 さらに、損傷したタンクからは燃料が漏れ、2つある油圧系統の1つが使用不能になり、スポイラーなどの一部のシステムに作動不良が生じていた。
 
 運航乗員5名、客室乗員24名、乗客440名の469名を乗せていたが、怪我人は出なかった。
 
 事故機の登録番号はVH-OQAで2008年9月19日に引き渡された通産14号機であった。
 
 飛行時間は8,165時間、飛行回数は831回であった。
 
 この事故を受けて、カンタス航空ではA380の運航を2010年11月27日まで停止した。
 
 
 
  
 
 
        
          
            | 事故の詳細 
 2010年11月4日、シンガポール発シドニー行きのカンタス航空QF32便で重大なトラブルが生じた。
 
 現地時間9時57分、運航乗員5名、客室乗員24名と乗客440名の合計469名を乗せたA380(VH-OQA;2008年9月19日引渡しの第14号機)は、シンガポール・チャンギ空港のRW20センターから離陸した。
 
 ギアアップ、フラップアップして速度250ktで高度7000ftを通過する際、「バン」という2つの異音が同時に聞こえ、計器が2番エンジンの異常を知らせた。
 
 パイロットはシンガポールのATCに事態を報告し、ATCはレーダーでホールディング空域に当該機を導いた。
 
 VH-OQAは離陸して4分後に左翼内側の2番エンジンが破損し、インドネシア領バタム島上空でエンジンのコンプレッサーの羽根、タービン・ディスクやカウリングのハニカム部材などが広く飛散した。
 
 機体はビンタン島北側のホールディング空域でレーストラック・パターンを飛行しながら破損状況の確認と緊急着陸のための燃料投棄を行ない、離陸してから1時間50分後にチャンギ空港に緊急着陸を行ない無事帰還した。
 
 この事故による負傷者はVH-OQAの搭乗者中にはいなかったが、バタム鳥の住民2名が落下してきた破片により軽傷を負った。
 
 幸運にもシンガポール空港を離陸して間もなくのVHF圏内での事故だったので地上からのサポートもフルに得られたのが無事の帰還に大きく貢献した。
 
 着陸後の点検では2番エンジンの中圧タービン・ディスクが破損し、その破片が主翼構造部を貫通して燃料パイプや油圧システムに影響を与えていることが判明した。
 
 ○燃料・油圧系統にまで波及した深刻なダメージ
 エンジンの破損については大別して「コンテインド・ダメージ」と「アンコンテインド・ダメージ」の2種類がある。
 
 前者は破損の範囲がエンジン内部に限られるものであり、後者は破損がエンジン内部に限られることなく、カウリングやナセルを突き破って外部にまで及ぶ非常に重大な事故である。
 
 高速で回転するコンプレッサーやタービンの周辺には通常補強材が張ってあり、万が一、羽根が飛散しても外側には突き抜けないような配慮がなされている。
 
 ところが飛散した羽根の速度によっては運動エネルギーが大きくなって羽根が補強材を突き破ってしまうことすらある。
 
 VH-OQAの破損状況を見ると、左主翼の上下外板の破損と燃料タンクからの燃料漏れ、2系統ある油圧システムのうち1系統の喪失、燃料システムのトラブル等を抱えていた。
 
 この燃料システムのトラブルは後方タンクから前方タンクヘの移送が出来なくなったというもので、もし長時間の飛行時に発生したと仮定すると機体の安定性に深刻な影響を及ぼす可能性があった。
 
 また油圧システムの故障でグランドスポイラーが展開せず、滑走路エンドまであと100mのところで危うく停止した。
 
 ブレーキ温度は900℃まで上がり、穴があいた燃料タンクからは燃料が漏れていて危機一髪の状況だった。
 
 なお着陸後、1番エンジンをシャットダウンしようとしたがどうしても停止できなかった。
 
 この事故後、ATSB(オーストラリア運輸安全委員会)が主体となり、エンジンのメーカーであるロールス・ロイス社、機体メーカーであるエアバス社、カンタス航空、シンガポールとインドネシア航空当局と協力して事故調査が開始された。
 
 事故調査委員会の迅速な活動により、中・高圧タービン・ベアリングヘのオイル供給パイプ根元部の疲労クラックと判明した。
 
 このクラックは製造時のミスによりパイプ肉厚が一定ではなく、薄くなった部分ができたために生じたと推定されている。
 
 |  
 トップへ  戻る
 
  
 |