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全日空 B737-800が北海道大雪山系に異常接近

2010年10月26日、旭川行きANA325便が北海道大雪異常接近した。

重大インシデントを調査している運輸安全委員会によると最接近時の状況は大雪山系の比布岳まで約220メートルであった。

一瞬でも回避操作が遅れていれば大惨事につながった危険な事態であった。

この事態はかつて南米コロンビアで起きた事故を彷彿とさせるものである。

FMSの入カミスからボーイング757が山岳地帯を迷走、GPWSが作動した瓜展帳していたスピードブレーキをリトラクトできないまま地表に接触、墜落した有名な事故である。

今回のANA325便も同じくディセントフェーズにあり、降下状態から一気に上昇に転じる回避操作を行なわなければならなかったという意味で非常にクリティカルだったのである。

航空機がなんの支障もなくフライトできる状態だったのに地表に衝突してしまう事故はCFlT(シーフィット:Controlled F1ight Into Terrain)と呼ばれ、現代の航空事故に特徴的なものとされる。

信頼性の上がった航空機は機械的な故障で墜落するケースは少なくなったが、操縦者が気づかないまま地表に接近してしまうケースが目立つようになったのである。

そのような事故を減らすには操縦者のSituational Awarenessを高める必要があり、そのために開発されたのがGPWS(対地接近警報装置)であり、EGPWS(強化型対地警報装置)であった。

後者は地表への接近警報を音声で発するだけでなく、操縦室のマップ画面に垂直状況を表示、さらにコンピュータが計算した最適のピッチアングル(機首上げ角度)を表示して解決法が提示できるようになっている。

ANA325便は最新鋭のボーイング737-800であり、もちろんこのEGPWSか装備されていた。

調査進捗報告書にはインシデントの発生をシミュレータで再現したとみられるPFDとNDの画面表示警報の画像が掲載されている。

1枚が40〜60秒後に地表への衝突が予想される時点のPFDには気圧高度6,700フィート、降下率2,000フィートfpmが表示されているように見える。

20〜30秒後の衝突予想時点でも同じ高度6,700フィートを示しているが、降下速度は正反対に2,400フィートfpmの上昇率を示している。

そして2枚とも高度計ウインドウの上には管制官が降下指示を出したとされる5,000フィートのコマンド・アルチが表示されている。

またND画面にはデータベースに記憶されている地形情報が表示され、対地接近の危険度に応じてグリーン、アンバー、レッドに彩られている。報告書の写真では自機シンボルを表す三角形に赤色が接していることがわかる。

それが大雪山系だ。

さらにPFDの画像ではバンク角の増加が読み取れる。

7度から15度のバンクアングルの増大が回避操作と関連があるのかどうかは不明。

報告書ではGPWS警報が2度鳴ったとされているが、そのとき飛行機は変針中で、直線に飛行してきたところでのこのライトターンは管制官の変針指示を受けてのものかもしれない。

変針で大雪山系に正対する格好になったことからGPWSかプルアップ警報を発したと見ることができる。

残る疑問は、伝えられるように管制官が誤った降下指示を出したとして、なぜパイロットがアクセプトしてしまったのかであろう。

ディスプレイには周辺地形の垂直状況が示されていたはずであり、もしこの表示機能がオフになっていたとしても旭川空港のアプローチチャートには空港東側の最低降下高度が9,600フィートであることが記載されているからである。

同型機(事故機の機番は不明)


JA57AN  B737-800
2010.09.11  中部国際空港(セントレア)にて撮影


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